基礎インスリンの補充を開始

2008年11月4日:12回目の通院。HbA1c(JDS値)は、先月10月の測定値6.3[%]から今月7.1[%]へと急激に悪化しました。

10月は朝食前インスリンを5単位から7単位に変更して、努めて運動をしたにもかかわらず、です。

2008年10月の血糖自己測定平均値
  • 朝食前:169, 後:256 [mg/dl]
  • 昼食前:180, 後:207 [mg/dl]
  • 夕食前:153, 後:248 [mg/dl]
  • 就寝前:187 [mg/dl]

インスリン量:7-3-4-0(朝食前-昼食前-夕食前-就寝前)[単位]

2008年11月から新たに基礎インスリンの補充(就寝前4単位)が始まることを踏まえ、インスリン量が7-3-4-0単位だった期間のHbA1c(JDS値)と空腹時および食後2時間の血糖自己測定平均値の推移を見てみました。

筆者の場合は食後2時間血糖値が元々高い傾向があり、あるところから空腹時血糖値が急上昇しました。

HbA1cと血糖自己測定値の推移

以下は、HbA1c(JDS値)[%]と空腹時および食後2時間の血糖自己測定平均値[mg/dl]の推移です。

インスリン量は、全期間朝食前5、昼食前3、夕食前4単位です。

「空腹時」は、朝食前、昼食前、夕食前、就寝前の各血糖自己測定平均値を平均したものです。「食後2h」は、朝食後、昼食後、夕食後の各血糖自己測定平均値を平均したものです。

  • 2008年4月:HbA1c 5.5 / 空腹時 94 / 食後2h 151
  • 2008年5月:HbA1c 5.6 / 空腹時 99 / 食後2h 163
  • 2008年6月:HbA1c 5.7 / 空腹時 100 / 食後2h 172
  • 2008年7月:HbA1c 5.8 / 空腹時 114 / 食後2h 179
  • 2008年8月:HbA1c 5.9 / 空腹時 117 / 食後2h 177
  • 2008年9月:HbA1c 6.3 / 空腹時 137 / 食後2h 241
  • 2008年10月:HbA1c 7.1 / 空腹時 172 / 食後2h 237

HbA1cの悪化とともに空腹時血糖値もじわじわと上昇し、あるところから急激に悪化しました。

食後2h血糖値は、空腹時血糖値より測定数が少なく元々高めの値で、空腹時血糖値というベースラインの上昇に合わせて高くなっているという感じです。

HbA1c(JDS値)7.1[%]は、日本糖尿病学会の「血糖コントロール状態の判定と対策」によると「可」レベルです。

しかし、血糖値は、空腹時血糖自己測定平均値が172[mg/dl]、食後血糖自己測定平均値が237[mg/dl]ですし、先月通院時の随時血糖値が302[mg/dl]、今月が195[mg/dl]ですから、「治療法の変更が必要」な判定「不可」レベルと言えます。

空腹時血糖が高くなる原因は、肝臓の糖放出システム(糖新生とグリコーゲン分解)の暴走が原因と思われますので、基礎インスリンを補充するために持効型溶解インスリン「レベミル®」を就寝前に4単位追加することになりました。

入院ではない外来のインスリン治療では、低血糖は最も注意すべきことで、「4単位が適切な量かどうかはわかりませんが、まずは4単位から開始します」という医師の説明でした。

持効型溶解インスリン「レベミル®

レベミル® は、インスリン作用のピークが無く長時間作用が持続する性質を持たせるため、ヒトインスリンのアミノ酸配列に変更を加えたインスリンアナログです。

ヒトインスリンB鎖30位スレオニン(Thr or T)を削除して、B鎖29位リジン(Lys or K)残基に脂肪酸であるミリスチン酸を結合させたことにより、アルブミンと親和性を示します。

レベミル®
  • 一般名:インスリン デテミル(遺伝子組換え)
  • 販売名:レベミル(Levemir)

一定レベルを保つの「Level」と「ヒトインスリンB鎖29位のリジン残基にミリスチン酸(myristic [mir] acid)を結合したこと」との合成語。

インスリン作用を持続させるメカニズムは、

  1. ミリスチン酸の脂肪酸側鎖が、インスリン デテミル六量体間の自己会合を促すこと
  2. 皮下注射部位においてアルブミンと結合すること

から、投与部位からの吸収は、緩徐となる。

血中においては、インスリン デテミルの98%以上がアルブミンと結合し平衡状態となるため、組織への拡散および毛細血管壁の透過が可能な非結合型インスリン デテミルの濃度は低く保たれ、インスリン デテミルの抹消の標的組織への分布は緩徐である。

従来のインスリン製剤の問題

レベミル® のような持効型溶解インスリンが使われる以前、基礎インスリン補充の主流は、中間型NPHインスリン(Neutral Protamine Hagedorn略してN、または Isophane Insulin)がでした。

中間型NPHインスリンは、インスリン作用を長時間持続させるために、速効型インスリンに持続剤としてプロタミン硫酸塩を用いた製剤です。

一方、追加インスリン補充においても、超速効型インスリンが使われる以前は、速効型インスリン(Regular Insulin、略してR、または溶解インスリン)が主流でした。

従来のインスリン製剤
  • 基礎インスリン
    • 中間型NPHインスリン(N、イソフェンインスリン):速効型インスリン+プロタミン硫酸塩
  • 追加インスリン
    • 速効型インスリン(R;Regular Insulin、溶解インスリン)

また、速効型である溶解インスリンと中間型であるイソフェンインスリンをそれぞれ3:7、4:6、5:5の割合で含有する、作用発現の速さと作用持続性を併せ持つ混合型インスリンも存在します。

中間型NPHインスリンや混合型インスリンの注射剤は、白色の懸濁液で、放置すると白色の沈殿物(結晶インスリン)と無色の上澄液に分離し、穏やかに振り混ぜると再び容易に懸濁状になります。

このことは、注射前の攪拌・再懸濁が不十分だった場合、実際に投与されるインスリン量が変動する可能性を引き起こします。

また、作用時間が約14時間と比較的短く、投与後4~6時間に作用ピークがあるために思いもよらない低血糖を起したり、十分な血糖コントロールを得るために1日あたりの投与回数を増やさなければなりませんでした。

ノボリン®Rなどの速効型インスリンやノボリン®Nなどの中間型NPHインスリンの一般名は、洋名ではInsulin Human、和名ではヒトインスリン(遺伝子組換え)です。

名前からわかるように、これらは人間の膵臓から分泌されるインスリンと生物学的、物理学的、化学的に同一で、遺伝子組換え技術によって製造されたインスリンです。

速効型インスリンをRegular Insulin=正規のインスリンと呼ぶのは、ヒト膵由来インスリンと同一だからと思われます。

さて、膵臓のβ細胞の分泌顆粒の中に貯蔵されている分泌寸前のインスリンは、安定して存在するためにインスリン分子が6個集まった6量体という構造をとっています。6量体インスリンが血中に放出されるとただちに単量体へ解離し、インスリン作用が発現します。

一方、速効型インスリン(Regular Insulin)は、構造的にヒトインスリンと同一ですから、製剤中では6量体として存在しています。

速効型インスリンを皮下注射した場合、細胞と細胞の間にある組織液により希釈され、まず6量体から3個の2量体へ解離し、さらに単量体へ解離していきます。

2量体または単量体になったインスリン分子は、毛細血管に入り込めるようになり、血管を通って全身の細胞に届けられ、インスリン作用が発現します。

この6量体から2量体または単量体への解離過程に時間がかかるため、インスリン作用発現までに約30分の時間的遅れが生じることになります。

インスリンアナログ

2001年、超速効型インスリンであるインスリン リスプロ(ヒューマログ®)とインスリン アスパルト(ノボラピッド®)が登場しました。

これらは、遺伝子組換え技術によって2量体を形成しにくいように、ヒトインスリンのアミノ酸配列に変更を加えたインスリンアナログです。

ヒトインスリンとは別の化合物なのだけれども、性質や構造はヒトインスリンと類似しているインスリン、ということです。

ヒトインスリンB鎖28位プロリンをリジンに、29位リジンをプロリンに組み換えたインスリンアナログがインスリン リスプロ、B鎖28位プロリン残基をアスパラギン酸に置換したものがインスリン アスパルトです。

いずれも皮下において6量体から2量体を経ずにすぐに単量体となるため、速効型インスリンよりも速やかにインスリン作用が発現します。