ヒトiPS細胞で1型糖尿病の完治に期待

2007年11月21日、日本人患者からiPS細胞作製へ 病気解明へ京大チームという記事を目にしました。

新聞記事は、論文を何とか文章にしようとするものだから、何度読んでも「むずかしい」のですけれども、1型糖尿病や筋ジストロフィー、先天性の貧血など免疫難病の原因解明や新治療薬・治療法の開発に大きく寄与するもの、らしい。

筆者自身も1型糖尿病患者だから、この記事中の「1型糖尿病」という語句が目に入ってピクリと反応してしまった。睡眠時間が長くても短くても糖尿病になるリスクが高い、というニュースには反応しなかったが。

膵島移植とiPS細胞

自己免疫機序により膵β細胞を失っている1型糖尿病に対する再生医療のひとつは、膵島移植です。

膵島移植は、ドナーの膵臓から分離した膵島組織を点滴の要領で肝門脈に注入し、肝臓内に移植する組織移植療法です。

膵島移植の効果は、直後はインスリン注射から開放されますが、時間経過と共にインスリン注射も必要になっていき、5年後には90[%]がそうなります。

自分のインスリン分泌は残存しているけれども、耐糖能は十分ではない緩徐進行性1型のような状態ですかね。

1型糖尿病に対する膵島移植の問題は、次の3つです。

  1. ドナーまたはドナー膵島組織の不足
  2. ドナー膵島組織に対する拒絶反応
  3. 再度の膵島自己免疫

ドナー膵島組織の資源として期待できるもののひとつは、ES細胞(embryonic stem cells)です。

ES細胞は、ヒトの受精卵から作製される胚性幹細胞で、すべての身体の組織に分化する分化多能性を持ち、さらに分化多能性を維持したまま無限に増殖させる事が可能です。

しかし、受精卵を材料として用いることから、生命倫理問題を内在します。

iPS細胞(induced pluripotent stem cells;誘導多能性幹細胞)は、体細胞に数種類の遺伝子を導入することにより、ES細胞のような分化多能性と増殖能を持たせた細胞のことです。

ES細胞の生命倫理問題が解決でき、さらに、レシピエントの体細胞を使って膵島細胞へ分化・増殖させることにより、拒絶反応を抑制できます。

最大の問題は、移植後も膵島自己免疫が起こることです。1型糖尿病患者のiPS細胞由来の膵島細胞を用いた発症機構解明により、膵島自己免疫を克服できるヒントが見えてくればよいのですが。

現在、ヒトiPS細胞由来のインスリン産生機能をきちんと持つ三次元的膵島構成物をドナー膵島組織の資源とするべく、研究が進められているようです。