膵臓、肝臓と心臓のチェック [糖尿病教育入院4日目]

2007年11月1日 木曜日:教育入院とはいっても前半は検査の連続で、いつのまにか時間が過ぎています。

検査の予定や治療内容の変更は毎日その都度聞かされますけれども、「いいえ」 と答えるわけにもいかず、「はい」 と素直に従うだけです。

入院中は、専門用語をインターネットで調べることもできず、一人部屋の個室は別ですが、『糖尿病治療の手びき-日本糖尿病学会編』という本を見て、なんとなく意味を理解したような気になるしかありません。

腹部CT(膵臓・胆のう・肝臓のチェック)

コンピュータ断層撮影(Computed Tomography; CT)は、X線などを利用して物体の断面画像や三次元内部画像を得る技術です。

検査自体は、ベッドに仰向けに寝た状態で大きなドーナツ状の装置の中を移動して行くだけで、短時間で終わりました。

なぜ腹部CTによって膵臓、胆のう、肝臓のチェックが行なわれたのでしょうか。糖尿病の治療を行なう上で、糖尿病のタイプを知るために必要な検査だから、と思われます。

糖尿病の診断は血糖値から可能ですが、成因や合併症の有無を把握しておかないと、治療方針を誤ってしまいます。診断後は、成因的にどのタイプなのかを調べられます。

成因分類
  • 1型:膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる部分のβ細胞が破壊され、インスリンを分泌できなくなる。
  • 2型:インスリン抵抗性とインスリン分泌不全が関与する。
  • その他の型:遺伝子異常が同定されたものと他の疾患や病態に伴うもの。
  • 妊娠糖尿病:妊娠中にはインスリン抵抗性を引き起こすホルモンが増加するため。

タイプの診断は、まず1型を疑い、次にその他の型を、1型でもその他の型でもなかったならば2型である、という手順を踏みます。

その他の型の発症機序には、遺伝子異常、膵癌や慢性膵炎などの膵臓の病気、肝硬変や脂肪肝などの肝臓の病気、ホルモンの病気などがあり、腹部CTは、膵臓や胆のう、肝臓に腫瘍や異常がないかを確認するための検査だと思われます。

心臓超音波検査(狭心症・心筋梗塞のチェック)

検査結果は異常無しだと思うのですが、これを見ても内容は全くわかりません。わからないままにしておくのもいやなので、とりあえず調べてみました。

心臓の超音波検査でわかること
  • 1回の拍動で送り出すことができる血液量
  • 心臓壁・心臓弁の動きの異常
  • 心臓壁や心房、心室の肥厚といった構造的異常

などから心筋の運動低下が認められれば、ごく軽度の心筋梗塞が疑われる。

計測モードは、

  • B(2次元=2D)
  • M(Motion:動き)
  • ドップラー
  • カラードップラー

高血圧などの負荷により、血液を送り出す力が通常より多く必要になると、負荷に打ち勝つ力を出そうとして心筋がたくましくなります。

  • 心肥大:心臓の壁が厚くなる
  • 心拡大:心臓の内腔が大きくなる

心臓の弁がうまく閉まらなくて血液が逆流するような場合にも負荷になり、心肥大や心拡大によって負荷に打ち勝とうとします。このような無理が続くと心臓はいつかダウンして、心不全が見られるようになります。

心不全とは
心臓の血液を送り出すポンプ機能が低下して、全身の臓器に十分な血液を送ることができなくなった状態のこと。

心不全には、全身に血液を送り出すポンプ機能(左室収縮機能)が正常でも、送り出す血液を呼び戻す機能(左室拡張機能)が正常でない場合もあります。

【左室収縮機能の評価】

心臓が血液を全身に送り出すポンプ機能と左室心筋収縮率

大動脈径(AoD)
  • 35[mm]以上は大動脈の拡大が考えられる。
  • AoD; aortic diameter
左房径(LAD)
  • 42[mm]以上で左房拡大。正常では大動脈径と左房径はほとんど等しい。
  • LAD; left atrial dimension
心室中隔厚(IVSth)
  • 12[mm]より厚い場合は病的な心肥大が疑われる。
  • IVSth; thickness of interventricular septum
左室後壁厚(LVPWth)
  • 12[mm]より厚い場合は病的な心肥大が疑われる。
  • LVPWth; thickness of left ventricular posterior wall
左室拡張末期径(LVDd)
  • 55[mm]以上で左室拡大。
  • LVDd; left ventricular internal dimension in diastole
左室収縮末期径(LVDs)
  • LVDs<42[mm]
  • LVDs; left ventricular internal dimension in systole
左室駆出率(EF)
  • EF≦55[%](Teichholz法により左室容積算出)
  • EF={(左室拡張末期容積-左室収縮末期容積)/左室拡張末期容積}×100[%]
    容積={7/(2.4+径)}×径3
  • EF; ejection fraction
左室内径短縮率(FS)
  • 30[%]≦FS≦50[%]
  • FS={ (LVDd - LVDs) / LVDd } × 100[%]
  • FS; fractional shortening
【左室拡張機能の評価】

心臓が送り出した血液を呼び戻す機能

ドプラ法による左室流入血流速波形(TMF)
  • E波/A波>1 が正常波形パターン
    • E:左室急速流入血流速度; early diastolic filling velocity
    • A:心房収縮期流入血流速度; atrial filling velocity
  • TMF; transmitral flow pattern

弁所見において異常が無ければ(-)表示です。筆者の所見には(+)がありますけれども、mildですから軽度のというところでしょうか。

  • AR(aortic regurgitation):大動脈弁逆流
  • AS(aortic stenosis):大動脈弁狭窄
  • MR(mitral regurgitation):僧帽弁逆流
  • MS(mitral stenosis):僧帽弁狭窄
  • TR(tricuspid regurgitation):三尖弁逆流
  • PR(pulmonary regurgitation):肺動脈弁逆流
  • PS(pulmonary stenosis):肺動脈弁狭窄

運動負荷心電図(狭心症・不整脈のチェック)

心電図(Electrocardiogram:ECG)の中で最も一般的な12誘導心電図は、四肢および胸壁に装着した陽極と陰極の電極間の電位差により示される、心臓の電気的活動の12種類の波形を記録します。

これらの波形は、心臓の異常、特に不整脈や心筋虚血を診断する上で重要です。

12誘導心電図は、体の力を抜き気持ちを落ち着け、ベッドに寝た状態で記録されます。これが安静時心電図です。

安静時には異常が現れない場合も多く、運動をすることにより心臓に負荷を与え、不整脈や狭心症などの異常を発見するために心電図を記録する検査が負荷心電図です。

負荷心電図の種類
  • 運動負荷心電図
    • マスター2階段
    • 自転車エルゴメーター
    • トレッドミル負荷
  • 薬物負荷心電図

ここでは、マスター2階段ダブル負荷試験を行い、負荷の前後で心電図をとりました。負荷の内容は、2段の階段を年齢、性別に応じた速度で3分間上り下りをします。

糖尿病の症状のひとつである体重減少に伴って、筋力が低下した身体には相当堪えました。危うく転びそうでした。

心電図波形の見方は、メルクマニュアル心電図検査(ECG)が詳しいです。

心電図波形のST部分が基線より上昇または低下している状態をST変化といい、虚血性心疾患の代表的な心電図所見です。ST上昇からは心筋梗塞が、ST低下からは心筋虚血、心肥大がわかります。

筆者の場合は、上室性期外収縮(SVPC; supraventricular premature contraction)と心室性期外収縮(VPC; ventricular premature contraction or PVC; premature ventricular contraction)という不整脈が認められました。

不整脈

心拍数やリズムが一定でない状態。心臓を興奮させる電気信号の発生場所や経路の異常(電気系統の故障)と言える。

  • 脈がゆっくり打つ(徐脈)
  • 速く打つ(頻脈)
  • 不規則に打つ(期外収縮)

運動や緊張した時に脈が速くなるような生理的な不整脈は問題ありませんが、病気に由来する不整脈は危険です。

上室性期外収縮の心電図波形は正常な波形と同じですが、心室性期外収縮の心電図波形は明らかに異なりますから、簡単に判別できます。

多くの期外収縮は病気とは関係なく、年齢や体質的な理由から起こるものですが、心室性期外収縮の一部には心筋梗塞や心筋症が原因で起きている場合があり、危険な不整脈に移行する可能性があります。

筆者は、後日循環器科を受診したところ、トレッドミル負荷心電図検査を受けることになりました。

入院4日目の治療、検査、食事の記録

  • 0645 起床。血圧 : 115/72[mmHg], 体重測定 : 64.8[kg]
  • 0730 血糖値測定:183[mg/dl]
  • 0800 インスリン注射:6単位、朝食:ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、キャベツと絹さやの味噌汁、ほうれん草の卵巻き、トマト、大根おろしグリーンピース、減塩しょうゆ、ししとうの味噌炒り煮、牛乳(炭水化物 : 101[g]、カロリー : 657[kcal]=8.2単位)

    朝食 2007年11月01日 木曜日 ごはん220[g](82[g]-370[kcal]-4.6単位)、キャベツと絹さやの味噌汁、ほうれん草の卵巻き、トマト、大根おろしグリーンピース、減塩しょうゆ、ししとうの味噌炒り煮、牛乳(炭水化物:101[g]、カロリー:657[kcal]=8.2単位)

  • 0805 回診
  • 0920 心臓超音波検査
  • 1025 回診「インスリンを朝8単位、昼6単位、夕8単位にする。飲み薬(メルビン)を追加する。食後、散歩程度の運動をしなさい」
  • 1100 テーマ別栄養指導:外食の取り方
  • 1130 血糖値測定:333[mg/dl]
  • 1200 インスリン注射:6単位、昼食 : ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、ふのりと長葱のお汁、かじきの照り焼き、ピーマンと人参の炒めもの、ゆで卵、玉葱とわかめときゅうりの酢の物、ぶどう(炭水化物:116[g]、カロリー:610[kcal]=7.6単位)

    昼食 2007年11月01日 木曜日 ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、ふのりと長葱のお汁、かじきの照り焼き、ピーマンと人参の炒めもの、ゆで卵、玉葱とわかめときゅうりの酢の物、ぶどう(炭水化物:116[g]、カロリー:610[kcal]=7.6単位)

  • 1320 散歩(20分)
  • 1420 運動負荷心電図
  • 1525 ビグアナイド系経口血糖降下剤 メルビン の説明
  • 1540 看護師指導:血糖値自己測定のやり方
  • 1600 腹部CT
  • 1730 血糖値測定:125[mg/dl]
  • 1800 インスリン注射:8単位、夕食 : ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、玉葱としめじのお汁、もも皮なし若鶏肉の竜田揚げ、ブロッコリーのお浸し、ドレッシング、プロセスチーズ、冷奴、おろし生姜、減塩しょうゆ(炭水化物:96[g]、カロリー : 681[kcal] = 8.5単位)、食後メルビン1錠

    夕食 2007年11月01日 木曜日 ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、玉葱としめじのお汁、もも皮なし若鶏肉の竜田揚げ、ブロッコリーのお浸し、ドレッシング、プロセスチーズ、冷奴、おろし生姜、減塩しょうゆ(炭水化物:96[g]、カロリー:681[kcal]=8.5単位)

  • 1930 散歩(20分)
  • 2200 血糖値測定:193[mg/dl]、就寝