緩徐進行性の1型でした [糖尿病教育入院5日目]

2007年11月2日金曜日、「1型の糖尿病です」と告げられる。

1型の大部分は、膵β細胞の破壊性病変によるインスリンの供給不全が生じて発症する自己免疫性のタイプです。

膵β細胞破壊の進行度は一定ではなく、多くは口渇や多飲、多尿、体重減少といった糖尿病の典型的症状が出現して、何も治療をしなければ概ね3か月以内にケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る急性発症のタイプです。

筆者の場合、口渇と多飲を自覚してから1年以上経って病院を受診したのですけれども、ケトアシドーシスには至りませんでした。

インスリン分泌能は半インスリン依存状態のレベルであり、抗GAD抗体が陽性であることから、膵β細胞が数年にわたってゆっくりと失われていく緩徐進行性のタイプということでした。

抗GAD抗体検査

GAD(glutamic acid decarboxylase、グルタミン酸脱炭酸酵素)は、インスリンの次に同定された第二の糖尿病関連自己抗原です。

GADとは
  • グルタミン酸からγ-アミノ酪酸を合成する時に働く酵素
  • 自分自身の細胞が遺伝子情報を元に作り出したタンパク質
  • 脳や膵臓のランゲルハンス島β細胞に多く存在

ヒトのGADを抗原に用いて自己抗体を検出する検査は、いくつかの問題が有ります。

これを解決するために、抗GAD抗体検査では生化学的に定義したGADの標識付き組換えタンパク質を抗原とし、この抗原に結合する抗体を検出します。

ですので、膵β細胞破壊の自己免疫プロセスを反映するものです。1型糖尿病と診断された新規患者の約70[%]で抗GAD抗体陽性を示し、数年間陽性が持続することも多いです。

抗GAD抗体の判定値
  • 正常(陰性): 抗GAD抗体≦1.4[U/ml]
  • 1型糖尿病の疑い(陽性): 1.4[U/ml]<抗GAD抗体<10[U/ml]
  • 1型糖尿病(陽性): 10[U/ml]≦抗GAD抗体

糖尿病を発症した原因は何かということとは別に、病型を診断する上で、抗GAD抗体検査は重要です。

緩徐進行性の1型は、一見、2型と思わせる病型です。膵β細胞の破壊が進行しているにもかかわらず2型と診断されて、食事療法や運動療法などの2型糖尿病の治療だけが行なわれる状況ですと、インスリン依存状態に移行しやすいとされます。

1型の治療原則はインスリン療法ですが、完全にインスリンに依存していない緩徐進行性の1型にもインスリン療法は有効で、その目的は膵β細胞の温存です。

尿中C-ペプチド検査

尿中C-ペプチド検査は、入院3日目の蓄尿検査にて行なわれました。

この検査の意義は、自分の膵臓で作られるインスリンの量を知ることにより、インスリン依存(生存にインスリン注射が必要)状態にあるかどうかを判断することです。

血液中のインスリンを測定するという検査もありますけれども、既にインスリン治療を行なっている場合には、自分の膵臓から分泌されたインスリン(内因性インスリン)と注射からのインスリン(外因性インスリン)を切り分けることが困難ですし、血糖値と同様に食後なのか空腹時なのかでも値が変化します。

より正確に膵臓が分泌するインスリンの総量を知ることができるのは、尿中C-ペプチド検査です。

インスリン分泌能の判定
  • 正常:40[μg/day]≦尿中C-ペプチド≦100[μg/day]
  • 半インスリン依存状態:20[μg/day]<尿中C-ペプチド<40[μg/day]
  • インスリン依存状態:尿中C-ペプチド≦20[μg/day]

ヒトのプレプロインスリンは、膵臓β細胞内の小胞体という器官でつくられ、シグナルペプチド~B鎖~C-ペプチド~A鎖という一本の鎖状構造をしています。

プレプロインスリンは、短時間でA鎖とB鎖がジスルフィド結合してシグナルペプチドが切り離され、プロインスリンになります。

図1.プロインスリンからインスリンとC-ペプチドへ:プロインスリンが酵素により切断されて、インスリン1分子とC-ペプチド1分子に分かれる。

プロインスリンは、膵β細胞内のゴルジ装置(またはゴルジ体)という器官に移されます。

ここでは、ジスルフィド結合したA鎖・B鎖(これがインスリン)とC-ペプチドに分離し濃縮され、分泌顆粒といわれるものに貯蔵されます。

インスリンが必要になると、インスリンとC-ペプチドが膵臓β細胞の外へ放出されます。

ひとつのインスリンに対してひとつのC-ペプチドが存在することから、C-ペプチドの量を測定すれば分泌されるインスリンの量を知ることができる、という訳です。

C-ペプチドの約5[%]が尿として排出され、残りのC-ペプチドの生理作用は無いとされていますが、実はよくわかっていません。

入院5日目の治療、検査、食事の記録

  • 0630 起床、血圧:104/75[mmHg], 体重測定:65.0[kg]
  • 0730 血糖値測定:165[mg/dl]
  • 0800 インスリン注射:8単位、朝食:ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、大根の味噌汁、焼きハム、トマト、マヨネーズ、キャベツときゅうりと人参の浅漬け、味付けめかぶ、牛乳(炭水化物:99[g]、カロリー : 626[kcal]=7.8単位)、食後メルビン1錠

    朝食 2007年11月02日 金曜日 ごはん220[g](82[g]-370[kcal]-4.6単位)、大根の味噌汁、焼きハム、トマト、マヨネーズ、キャベツときゅうりと人参の浅漬け、味付けめかぶ、牛乳(炭水化物:99[g]、カロリー:626[kcal]=7.8単位)

  • 0820 回診「運動負荷心電図において不整脈が出ている」とのこと。
  • 0920 散歩(20分)
  • 1000 服薬指導
  • 1045 看護師指導:運動療法について
  • 1130 血糖値測定:234[mg/dl]
  • 1200 インスリン注射:6単位、昼食:ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、荘内麩のお汁、さわらの照り焼き、レタス、小松菜のお浸し、鰹節、減塩しょうゆ、オレンジ(炭水化物:95[g]、カロリー:561[kcal]=7.0単位)

    昼食 2007年11月02日 金曜日 ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、荘内麩のお汁、さわらの照り焼き、レタス、小松菜のお浸し、鰹節、減塩しょうゆ、オレンジ(炭水化物:95[g]、カロリー:561[kcal]=7.0単位)

  • 1240 散歩(20分)
  • 1330 回診 「5日月曜日に循環器科を受診するように」とのこと。
  • 1400 学習会
  • 1430 栄養士による個別栄養指導
  • 1715 回診 1型糖尿病と告げられる。
  • 1730 血糖値測定:132[mg/dl]
  • 1800 インスリン注射:8単位、夕食:ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、なめこ汁、牛丼の具(牛肉、玉葱、糸こんにゃく)、長葱とわかめとこんにゃくの酢味噌和え、オレンジ(炭水化物:107[g]、カロリー : 606[kcal]=7.6単位)、食後メルビン1錠

    夕食 2007年11月02日 金曜日 ごはん220[g](82[g]=370[kcal]=4.6単位)、なめこ汁、牛丼の具(牛肉、玉葱、糸こんにゃく)、長葱とわかめとこんにゃくの酢味噌和え、オレンジ(炭水化物:107[g]、カロリー:606[kcal]=7.6単位)

  • 2200 血糖値測定:233[mg/dl]、就寝