肝機能検査と血中脂質検査

2009年9月3日:22回目の通院。今月のHbA1cは、JDS値で6.2[%]、NGSP値で6.6[%]でした。

6月の6.5[%](JDS)から毎月0.1[%]づつ下がっています。尿糖も出ておらず、良い傾向にあると思います。インスリン量の変更は無く、このまま継続です。

また、年1回行なっている「メタボリックA」という肝機能と血中脂質の検査結果は、異常無しでした。

2009年8月の血糖自己測定平均値
  • 朝食前:113, 後:164 [mg/dl]
  • 昼食前:119, 後:244 [mg/dl]
  • 夕食前:104, 後:176 [mg/dl]
  • 就寝前:142 [mg/dl]

インスリン量:7-3-4-4(朝-昼-夕-寝前)[単位]

「メタボリックA」の検査結果
  • AST=GOT:14[IU/l](前年13[IU/l])
  • ALT=GPT:19[IU/l](前年25[IU/l])
  • γ-GT=γ-GTP:10[IU/l](前年12[IU/l])
  • トリグリセライド(中性脂肪;TG):26[mg/dl](前年121[mg/dl])
  • 総コレステロール:161[mg/dl](前年169[mg/dl])
  • HDL-コレステロール[直接法]:59[mg/dl](前年61[mg/dl])
  • LDL-コレステロール:97[mg/dl](前年84[mg/dl])

肝細胞の破壊や障害、炎症の程度を反映する指標

肝臓は、ヒトの体内最大の臓器であり、細胞数は3,000億個以上あると言われます。

消化官から吸収された栄養素は、血液を媒体として門脈から毛細血管を通じて肝臓に届けられ、肝細胞が持つ数百種類もの酵素を使って代謝されます。

代謝の化学反応は1万種類以上にもなることから大きな生化学工場とも呼ばれ、糖代謝やタンパク質代謝、脂質代謝、薬物代謝など代謝の中心として働きます。また、胆汁の生成といった重要な役割も担っています。

  • 糖代謝:グルコースからグリコーゲンを合成し、必要なときにグリコーゲンを分解して、あるいは糖新生により血液中にグルコースを供給
  • タンパク質代謝:アミノ酸からアルブミンや血液凝固因子を合成
  • 脂質代謝:脂肪酸やコレステロールを合成
  • 薬物代謝:アルコールや不要になったホルモン、薬物を分解
肝機能検査

肝臓の「生化学工場」としての能力を評価する検査の多くは、肝機能検査と呼ばれていますけれども、ズバリ肝機能を評価する検査は、プロトロンビン時間やビリルビンなどわずかです。

  • 血清アルブミン(ALB)
  • コリンエステラーゼ(CHE)
  • プロトロンビン時間(PT)
  • 総コレステロール(CHO)
  • 血中アンモニア(NH3
  • ビリルビン(T-BIL,B-BIL)

下記の項目は、肝機能を評価するというより、肝細胞の破壊または損傷の程度を評価する指標です。

  • AST
  • ALT

下記の項目は、飲酒のマーカーであり肝胆道系疾患の指標です。

  • γ-GT

内臓は、組織が損傷したときの「痛い」とか「苦しい」という自覚症状を感じにくく、特に肝臓は、再生能力が非常に強いために損傷による自覚症状は現れにくいです。

AST、ALT、γ-GTのいずれも肝細胞に存在する酵素の略称で、何らかの原因で肝細胞が破壊または障害を受けた場合、これらの酵素は細胞外へ漏れ出し、血液中に流出します。

これら「逸脱酵素」の血中濃度は、沈黙の臓器とも言われる肝臓の痛みを代弁するものです。

糖代謝の重要な役割を担う肝臓が痛めば、血糖コントロールに悪影響を及ぼすことは容易に想像でき、慢性肝炎や肝硬変が二次性糖尿病の原因となることからも明らかです。

AST

アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST; Aspartate Amino Transferase)は、アミノ基転移酵素のひとつで、心臓(心筋)や肝臓において活性が高く、筋肉(骨格筋)には心臓の6割程度、また赤血球にも分布します。

ASTが触媒する反応

アスパラギン酸のアミノ基NH2がα-ケトグルタル酸に転移してグルタミン酸になる。アスパラギン酸とグルタミン酸はアミノ酸の一種。

  • アスパラギン酸(Asp)+α-ケトグルタル酸 → オキサロ酢酸+グルタミン酸(Glu)
    • Asp:HOC(=O)-CH2-CH(NH2)-COOH
    • α-ケトグルタル酸:HOC(=O)-CH2-CH2-C(=O)-COOH
    • オキサロ酢酸:HOC(=O)-CH2-C(=O)-COOH
    • Glu:HOC(=O)-CH2-CH2-CH(NH2)-COOH

α-ケトグルタル酸とオキサロ酢酸はTCA回路の中間体であり、オキサロ酢酸は、糖新生の材料になることもできる。

ALT

アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT; Alanine transaminase)はアミノ基転移酵素のひとつで、肝臓において特に活性が高く、ASTよりも肝臓特異性が高いです。

ALTが触媒する反応

グルタミン酸のアミノ基NH2がピルビン酸に転移してアラニンになる。グルタミン酸とアラニンはアミノ酸の一種。

  • グルタミン酸(Glu)+ピルビン酸 → α-ケトグルタル酸+アラニン(Ala)
    • Glu:HOC(=O)-CH2-CH2-CH(NH2)-COOH
    • ピルビン酸:CH3-C(=O)-COOH
    • α-ケトグルタル酸:HOC(=O)-CH2-CH2-C(=O)-COOH
    • Ala:CH3-CH(NH2)-COOH

ピルビン酸は、糖新生の材料になることができる。

AST/ALT比パターンによる疾患分類

何らかの原因で肝細胞が破壊または障害を受けた場合、肝細胞内の酵素は細胞外へ逸脱し、ASTやALTの血中濃度[UI/l]は上昇します。

肝疾患においては、ASTおよびALTの値の上昇を認めますが、ASTとALTでどちらが優位か(どちらの値が高いか)かつそれらの値が高いか低いか、という特徴によって疾患の分類ができます。

AST/ALT>1

AST優位。ASTおよびALT値は低く100以下のことが多い。

  • アルコール性肝炎(200~500)
  • アルコール性脂肪肝(40~200)
  • 肝硬変、肝癌(40~200)
  • 溶血(40~200)
  • 心筋梗塞(40~500)
AST/ALT>1 ⇒ AST/ALT<1

初期はAST優位で時間経過とともにALT優位。ASTおよびALT値は高く500から3,000。

  • 急性ウイルス性肝炎(500~数千)
AST/ALT<1

ALT優位。ASTおよびALT値は低くせいぜい300以下。

  • 慢性肝炎(40~200)
  • 過栄養性脂肪肝(40~200)

γ-GT

γ-グルタミルトランスフェラーゼ(γ-GT; γ-glutamyltransferase)は、グルタチオン(GSH)などのγ-グルタミル化合物のγ-グルタミル結合の加水分解およびγ-グルタミル基の転移を触媒する酵素で、飲酒のマーカーであり肝胆道系疾患の指標です。

ヒトでは、腎臓において最も大量に存在しており、肝細胞の毛細胆管や小腸上皮細胞などに局在します。

γ-GTが触媒する反応

グルタミン酸(Glu)、システイン(Cys)、グリシン(Gly)の3つのアミノ酸から成るトリペプチド、グルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)を加水分解。

  • γ-Glu-Cys-Gly + H2O ⇒ Glu + Cys-Gly

グルタチオンのγ-グルタミル基を各種アミノ酸やジペプチド、アミン類のγ-グルタミル基受容体(=Y)に転移。

  • γ-Glu-Cys-Gly + Y ⇒ γ-Glu-Y + Cys-Gly

γ-GTは、酵素活性中心が細胞の外側を向いていて細胞膜に錨を降ろしたような形で結合している一種の膜結合型酵素なので、肝細胞膜が破壊または損傷することにより血中に流出するASTやALTとは違い、アルコールや薬物、肝胆道疾患に誘導されて値が上昇します。

その上昇は、アルコール性肝障害(脂肪肝<肝炎<肝線維症<肝硬変)で特異的です。

アルコール100[g](20度の焼酎換算で500[ml])を毎日連続1週間摂取すると、一時的にアルコール性脂肪肝になるようです。ただ、2~4週間断酒すれば、多くの人は正常値に戻ります。