ストレスや感染症、慢性炎症などで相対的にインスリン作用が不足して、基礎インスリンに相当する部分が不足してくると、朝食前血糖値が高くなっていることに気付きます。

朝の血糖値が高いところから1日が始まりますから、それに引きずられて昼食前、夕食前の血糖値は十分に下がらず、食後血糖も今まで以上に高くなります。

筆者の場合、肩関節周囲炎いわゆる五十肩がきっかけでした。

2008年6月の血糖自己測定平均値

食前3回インスリン注射で安定していた時期。

  • 朝食前:106, 後:197 [mg/dl]
  • 昼食前:96, 後:125 [mg/dl]
  • 夕食前:80, 後:193 [mg/dl]
  • 就寝前:117 [mg/dl]
2008年10月の血糖自己測定平均値

基礎インスリンを導入する直前。肩関節の激痛に耐えられず、この月に整形外科を受診

  • 朝食前:169, 後:256 [mg/dl]
  • 昼食前:180, 後:207 [mg/dl]
  • 夕食前:153, 後:248 [mg/dl]
  • 就寝前:187 [mg/dl]

睡眠前から朝食前にかけて、血糖値が十分に下がってくれません。睡眠中、体の中の「糖の流れ」どうなっているのでしょうか。そして、インスリン作用が低下すると、それはどう変わるのでしょうか。

絶食時もグルコース供給は途切れない

食事から摂った栄養素は、血流にのって全身に運ばれて利用されます。グルコースは、細胞のエネルギー源として利用される他、グリコーゲンや中性脂肪に形を変えて貯蔵されます。

食後、時間が経って血中のエネルギー源が減ってくると、貯蔵されていたグリコーゲンはグルコースに、中性脂肪は脂肪酸といったエネルギー源に変換されて、各組織の細胞に供給されます。

各組織のエネルギー源
  • 脳や赤血球、白血球:グルコース
  • 肝臓や骨格筋:グルコース、脂肪酸およびアミノ酸
  • 心筋:主に脂肪酸

特に脳へは生命維持のために途切れること無くグルコースを供給して、血糖レベルを保たなければなりません。なぜ血糖レベルを正常に維持しなければならないか、低血糖を経験した人はわかるでしょう。

糖尿病患者の低血糖は、インスリン効果が過剰になって血液中のグルコースが少なくなった状態です。手の震えや冷や汗といった初期の低血糖症状ならまだしも、意識混濁など危険な状態にも発展します。

脳細胞は、ケトン体をエネルギー源として利用することもできますが、特定の条件下でしかその状態になりません。

高血糖が特徴の糖尿病は、脳へのエネルギー供給面から見れば問題は無く、「生命を維持するためには高血糖も仕方が無い」という仕組みの要は、肝臓にあります。

生命レベルではとりあえず仕方が無いというだけで、高血糖が続けば糖尿病特有の合併症や動脈硬化症のリスクは明らかに高くなるので、日々食事に気を付けて運動しようと努力する訳です。

グリコーゲン分解

体内のエネルギー需要を満たしている時の食物由来のグルコースは、肝臓や筋肉にグリコーゲンの形で、脂肪組織に中性脂肪の形で貯蔵されます。

一方、運動をしている時や食後時間が経った時などのエネルギー供給が不足してくる状況では、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンを分解してグルコースを放出し、血糖を維持します。

グリコーゲン分解
  • グリコーゲン ⇒ グルコース-1-リン酸 ⇒ グルコース-6-リン酸 ⇒ [糖新生]の経路を経由 ⇒ グルコース⇒ 血中へ放出

インスリンは、グルコースに対して同化作用をするホルモンです。

  • グリコーゲン分解および糖新生を抑制
  • グリコーゲン合成および解糖系を促進

インスリン作用が不足すると、グルコースをグリコーゲンの形に変換して貯蔵しにくくなり、同時にグリコーゲンをグルコースに分解しやすくなります。

たとえて言うなら、穴の開いたタンクにグリコーゲンが少し溜まっていて、グルコースが穴から漏れている状態です。

血糖を維持するために、タンク(肝臓)の正規のコックからグルコースが放出されることは、何の問題もありません。

インスリン作用不足でタンクに穴が生じて、そこからグルコースが垂れ流しになるのが問題で、さらにタンクの容量も実質的に小さくなりますから、二重に問題です。

筋肉のグリコーゲン貯蔵量は肝臓の二倍以上にもなりますが、酵素グルコース-6-ホスファターゼが存在しないため、肝臓のように血中にグルコースを放出することはできません。

筋肉に血糖を上昇させる直接的要素はありませんから、運動により筋肉でグルコースを代謝してさらに取り込むことは、インスリン作用が低下した糖尿病患者にとって有効な方法です。

夕食後から朝食前の期間は、睡眠中に肝臓のグリコーゲンをグルコースに分解して、血中に放出する時間です。

朝食の前までにタンクの中を十分に減らしておくことは、グルコース取り込み率を上げるためにやっておきたいところです、自分の意思で何とかできることではないですが。

しかし、これができたとしても朝食前の空腹時に高血糖になるのは、糖新生というグリコーゲン分解とは別のグルコース放出の仕組みがあるためです。