糖尿病の有無:血糖値で「糖尿病型」を判定

「自分は糖尿病だった」と判明するきっかけ(=発見パターン)の多くは、次の2つだと思います。

  1. 自覚症状があった。
  2. 特定検診や健康診断で、空腹時血糖値やHbA1cの異常が見つかった。

「典型的な」と言われる口渇や多飲、多尿、体重減少など一連の自覚症状は、重度の代謝異常の状態に至ってようやく表れるもので、遅かれ早かれ医療機関を受診せざるおえなくなります。

一般に、典型的な症状が表れて著しい高血糖にあると、入院コースのようです。

筆者が経験した糖尿病の自覚症状

インスリン作用不足に起因する代謝異常による症状は、著しい高血糖状態にならないと表れません。尿糖としての糖排出に伴う多尿により脱水症状と…

糖尿病教育入院の目的と目標

糖尿病診断即入院でしたので、教育入院の目的は、血糖レベルを正常に戻すこと合併症の検査でした。そして、合併症予防のために自己管理ができる…

大部分の人は、特定検診や健康診断で血糖値あるいはHbA1cが異常値を示し、何らかのアクションを促されたことがきっかけでしょうか。

「要受診」の方は、なるべく早く医療機関を受診するように勧められるはずです。血糖値またはHbA1cが「異常なし」以外だった人は、以下の記事を読むことをお勧めします。

糖尿病の高リスク群(前糖尿病状態)

特定検診や健康診断で、空腹時血糖値が110から125[mg/dl]またはHbA1c(NGSP)が6.0から6.4[%]のものは、糖尿病の疑いが否定できな…

糖尿病の定義と説明

糖尿病は、インスリン作用の不足に起因する代謝異常が原因で、様々な疾患が合併する病気です。代謝異常の筆頭格は高血糖、疾患の代表格は糖尿病…

診断手順の詳細を知りたい場合は、科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドラインの 1.診断の指針(pdf)を見てください。

慢性高血糖の有無

個々の患者が以下の特徴を備えている時、糖尿病と診断されます。

  1. 高血糖で代表される糖尿病の代謝異常
  2. 代謝異常の原因がインスリン作用の不足にあること
  3. 代謝異常が長く続くと特有の合併症が表れること

他の病態から来る一過性の高血糖の場合もあるので、それと区別するために糖尿病型の高血糖が別の日に2回確認できれば、慢性高血糖(=糖尿病「有り」)と判断できます。

図1.糖尿病の有無の判定基準:空腹時血糖値または75[g]OGTT2時間値が糖尿病型、かつHbA1cが糖尿病型である場合、慢性高血糖なので糖尿病の状態に有ると判断できます。

血糖値とHbA1cの検査結果の判定は、糖尿病という疾患群の診断とは立場が異なることから、ここでは糖尿病の「有無」という表記をしています。

血糖値とHbA1cの検査が同一採血同一測定の場合、下記のように1回(1日)で済みます。

健診などの検査値から

前夜から10時間以上絶食して朝食前の同一採血で1.を満たす場合、「有る」と確認される。

  1. 空腹時血糖値 ≧ 126[mg/dl] and HbA1c(NGSP)≧ 6.5[%]

特定検診や健康診断で「要精検」や「要観察」の異常があり、後日に経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を受けた場合、75[g]OGTT2時間値から確認できます。

OGTTから

早朝空腹時に無水物グルコース75[g]相当水溶液を経口摂取して、同一採血で2.を満たす場合、「有る」と確認される。

  1. 75[g]OGTT2時間値 ≧ 200[mg/dl] and HbA1c(NGSP)≧ 6.5[%]

特定検診や健康診断を受ける前に朝食を摂ってしまった、なんてこともあるかと思います。この場合、随時血糖値からも確認できます。

採血条件が空腹時以外

食事と採血時間との時間関係を問わない条件の同一採血で3.を満たす場合、「有る」と確認される。

  1. 随時血糖値 ≧ 200[mg/dl] and HbA1c(NGSP)≧ 6.5[%]
血糖値はグルコースの供給と消費で決まる

血糖値は、血液循環へのグルコース流入速度と血液循環からのグルコース除去速度で決まる動的な値です。グルコース供給源である食事の腸管吸収と…

HbA1cはグルコースが非酵素的に結合したヘモグロビン

HbA1cはグルコース濃度に依存して糖化反応が進み、血糖レベルの上昇と正の相関関係があります。変動が大きい血糖値では判断しにくい血糖コント…

HbA1c検査値の問題

HbA1cは、ヘモグロビンにグルコースが結合したグリコヘモグロビンです。その結合は、酵素の触媒作用ではなく血中のグルコース濃度に依存して反応します。

  • ヘモグロビン + グルコース ⇔ 不安定型HbA1 →(不可逆)→ 安定型HbA1c

HbA1cとして測定される安定型HbA1cは、血糖値が高いほど、それが長い時間続くほど反応は進みます。同様に、血中のヘモグロビン(赤血球中に存在)濃度にも依存します。また、赤血球の寿命が約120日であることも影響します。

HbA1cが低値方向に乖離
  • 糖代謝異常が急速に悪化した場合(未だ長時間高血糖に暴露していないため)
  • 貧血(ヘモグロビンが減少している状態のため)
    • 溶血性貧血
    • 鉄欠乏状態……など

また、HbA1cの標準化は済んでいるものの、機器間や検査施設間の差は、測定値の±5[%]程度はあるようです。

診断という用語を使わない理由

慢性高血糖が確認されれば糖尿病と診断できる条件には合致しますが、医師が様々な情報を参考にして総合的に判断するのが「診断」であり、診断後の治療に直結します。

診断で参考にされる情報
  • 症状や臨床所見
  • 糖尿病の家族歴
  • 発症年齢と経過
  • 肥満の有無や過去の体重歴
  • 代謝異常の程度
  • 合併症の有無およびその程度
  • 膵島関連自己抗体
  • インスリン分泌能とインスリン抵抗性に関して……など

診断の目的が、糖尿病特有の合併症を起こしやすい人の早期発見(慢性高血糖かどうか)と早期治療を開始して合併症予防や進行を遅らせることにある以上、慢性高血糖の確認をもって「診断」とは言えません。

ちなみに、筆者が糖尿病と診断されて、入院中に受けた検査は次のとおりです。

腹部CT(二次性糖尿病の判別)、心臓超音波検査、運動負荷心電図

膵癌や慢性膵炎などの膵臓の病気、肝硬変や脂肪肝などの肝臓の病気は二次性糖尿病の原因になるので、腹部CTで異常の有無を検査します。超音波…

抗GAD抗体検査と尿中C-ペプチド検査(1型の判別)

緩徐進行性の1型であっても、発症機序は膵β細胞の自己免疫性破壊によるインスリン供給不全です。インスリン分泌能は残っているので、病態は、…

神経伝導速度検査(神経障害)

糖尿病性神経障害の特異的な症状は無く、診断基準も確立されていません。しかし、神経障害の症状があり、他の疾患性神経障害を否定できる時、神…

眼底検査(網膜症)

糖尿病の合併症のひとつ、網膜症は、高血糖状態が長く続いているほど発症するリスクが高いことが疫学的にわかっています。眼底検査により網膜や…

尿中アルブミン検査とクレアチニンクリアランス検査(腎機能)

糖尿病性腎症第2期(=早期腎症)までは進行阻止可能なステージで、尿中蛋白成分アルブミンがこの病期の診断指標です。通常は尿中に漏れ出さな…

ABI検査とPWV検査(動脈硬化)

ABI検査は、両足首と両上腕の血圧を同時に測定して、足関節上腕血圧比から下肢血管内腔の閉塞状況を推測する検査。PWV検査は、心臓から押し…

頚部血管超音波検査(動脈硬化)

頚部血管超音波検査は、首の動脈に超音波をあててその反射波を画像化し、血管壁や血管内腔の状態から動脈硬化の程度がわかります。加齢と共に動…

トレッドミル負荷心電図(虚血性心疾患)

教育入院4日目の運動負荷心電図において不整脈が認められ、頚部動脈の超音波検査において動脈硬化が進行していました。トレッドミルの運動負荷…

妊娠糖尿病

妊娠糖尿病は、

  • 妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常

のことで、妊娠前から糖尿病だった場合は含まれません。妊娠初期から既に高血糖状態にある場合には、母児に様々な合併症を生じさせます。

母児の合併症発症リスクは血糖の上昇とともに高くなり、血糖値が糖尿病域に至っていない軽度の糖代謝異常の時からリスク管理が必要であることから、糖尿病の分類において独立した位置付けになっています。

スクリーニング

妊娠初期(初診時)に全妊婦、妊娠中期に初期スクリーニング陰性者を対象に行う。

  • 随時血糖値 ≧ 100[mg/dl]
判断基準

スクリーニング陽性者を対象に75[g]OGTTを行い、次の1点以上を満たした場合。

  1. 空腹時血糖値 ≧ 92[mg/dl]
  2. 75[g]OGTT1時間値 ≧ 180[mg/dl]
  3. 75[g]OGTT2時間値 ≧ 153[mg/dl]

もっと詳しく知りたい方は、下記を見てください。