「前糖尿病」状態とは?

2型糖尿病のほとんどは、通常、「前糖尿病」という状態(1年から2年あるいはそれ以上の期間、留まるかもしれない)を経て発症します。

図1.2型糖尿病の自然経過:インスリン抵抗性を代償するインスリンを分泌できている時期は正常血糖ですが、膵β細胞の機能障害が始まるとインスリンの分泌は減少し、耐糖能異常(前糖尿病)から糖尿病へと進展します。

「前糖尿病」状態
  • 血糖レベルは正常より高いが、糖尿病と診断されるほど高いレベルではない。
  • 2型糖尿病に進展するリスクが高い。
  • 動脈硬化による心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)の発症リスクも高い。

「前糖尿病」状態の明確な症状は無いです。糖尿病の症状または合併症さえも既に表れているかもしれませんが、それらはとても穏やかなものなので、糖尿病から来る症状とは気付かずに生活を送ることになるでしょう。

しかし、心血管疾患を発症してしまったら最悪は死、死を免れても今後の病状についての医学的な見通しは、あまり良いとは言えません。心血管疾患予防には、動脈硬化の進行を遅らせることが有効です。

糖尿病に合併する多くの健康障害や心血管疾患のリスクを回避す方法は、次の2つです。

  1. 2型糖尿病に進展させない。
  2. 正常な血糖レベルに戻す。

そして、「前糖尿病」状態は、予防行動をとることができる最初の場所(機会)です。

「前糖尿病」状態の血糖レベル

「前糖尿病」状態かどうかは、通常、健康診断や特定健診の血糖検査で見つかります。検査結果が以下のいずれかに該当する場合、「前糖尿病」状態であることを示します。

  • HbA1c(NGSP):5.6[%]~6.4[%]
  • 空腹時血糖値:100[mg/dl]~125[mg/dl]
  • OGTT2時間値:140[mg/dl]~199[mg/dl]

図2.「前糖尿病」状態の血糖レベル:空腹時血糖値が100[mg/dl]から125[mg/dl]で、正常高値と境界域を足した範囲。この空腹時血糖範囲に相当するHbA1c(NGSP)は、5.6[%]から6.4[%]。

健康診断や特定健診で行われる血糖検査は、通常、HbA1c(NGSP)と空腹時血糖値です。これらと比較して、OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)がより鋭敏な検査法であっても、目的やコストを考えれば普通は用いられません。

実は「前糖尿病(prediabetes)」は、ADA(American Diabetes Association)の基準です。どの血糖検査でこれを認めたかによって、IFG(impaired fasting glucose, 空腹時血糖異常)あるいはIGT(impaired glucose tolerance, 耐糖能障害)と呼ばれます。

日本のOGTTによる境界型と比較して、糖尿病発症のハイリスク群という意味で同義ですが、図2.の青色部分(空腹時血糖値が正常高値)だけ広くなっています。

境界域

健康診断や特定健診の血糖検査結果が以下のいずれかに該当する場合、「要精密検査」の通知が来ると思います。

  • 空腹時血糖値:110[mg/dl]~125[mg/dl]
  • HbA1c(NGSP):6.0[%]~6.4[%]

できるだけOGTTを受け、OGTT2時間値が200[mg/dl]以上だった場合、耐糖能は糖尿病レベルですので医療機関を受診するようにします。

OGTT2時間値が140[mg/dl]から199[mg/dl]だった場合、確実に耐糖能異常であり、糖尿病発症のハイリスク群です。

図3.境界型の血糖レベル:空腹時血糖値が110[mg/dl]から125[mg/dl]、OGTT2時間値が140[mg/dl]から199[mg/dl]のいずれかに該当する場合、血糖レベルは糖尿病型。

健康的な食事と運動を通して体重を少し落とすといった発症予防行動により、糖尿病発症のリスク因子が減る、あるいは血糖レベルが正常に戻ってハイリスク群から脱出することさえも可能です。

発症予防の効果確認と2型糖尿病発症を見逃さないために、健康診断や特定健診は毎年忘れずに受けることを勧めます。

正常高値

健康診断や特定健診の血糖検査結果が以下のいずれかに該当する場合、「要経過観察」の通知が来ると思います。

  • 空腹時血糖値:100[mg/dl]~109[mg/dl]
  • HbA1c(NGSP):5.6[%]~5.9[%]

毎年の健康診断や特定健診で、血糖レベルが上昇していないか、過体重や高血圧、脂質代謝異常などのリスク因子がないかを確認し、必要に応じて体重減量などの生活習慣の改善をすればよいと思います。