糖尿病患者の疲労と酸化ストレス

疲労は、健康な人にも病気を持つ人にも起こります。

糖尿病になってからの疲労は、休養や十分な睡眠を取ってもなかなか解消されず、その原因は糖尿病にあるのか、それとも別にあるのか不明のまま悩んでいる患者は少なくないようです。

疲労のメカニズムはよくわかっていませんけれども、疲労の要因のひとつに細胞レベルのエネルギー不足があると考えられます。そして、エネルギー不足を引き起こす原因のひとつが酸化ストレスです。

細胞内高血糖は、ミトコンドリアの高効率エネルギー産生システムを不安定にさせ、酸素を活性酸素に変えてしまいます。

活性酸素は、フリーラジカルとなってミトコンドリア自身を傷つけ、エネルギー産生が低下するのに加え、修復のためのエネルギー要求が増加します。

酸化ストレス

ヒトの活動に必要なエネルギーのほとんどは、細胞内のミトコンドリアという器官で産生されます。

ミトコンドリアの主機能
摂取した栄養素から、最終的に「酸化的リン酸化」の代謝過程において、高エネルギーリン酸化合物であるATP(adenosine triphosphate)に再合成される。酸素分子O2は、酸化的リン酸化で重要な役割を果たしている。

酸化的リン酸化の代謝過程において、酸素分子の一部は、スーパーオキシドなどの活性酸素種(ROS, reactive oxygen species;化学的反応性の高い酸素含有分子の総称)を自然に形成します。

生体内の活性酸素種は、良い面と悪い面を併せ持ちます。

  • 良い面:白血球が貪食した細菌を殺菌除去するために、酸素から生成した活性酸素を利用する。
  • 悪い面:反応性の高さから周辺の生体物質を酸化して、細胞の膜やタンパク質、DNAに損傷を与え、機能障害を引き起こす。

通常、細胞は、抗酸化物質が活性酸素種およびその関連物質を除去する働き(抗酸化作用)によって、保護されています。

  • 生体内での活性酸素種およびフリーラジカルの生成
  • 生体内の抗酸化物質による活性酸素種およびフリーラジカルの除去
  • フリーラジカルの酸化作用による生体損傷
  • 生体損傷生じた障害の修復

これらは生体内で同時に起こっている現象ですが、均衡が取れているのであれば、酸化作用による障害の「兆候」は現れないものです。

酸化ストレスとは?
  • 生体の酸化作用と抗酸化作用の間で均衡が崩れた状態のこと
    • 活性酸素種およびフリーラジカルの生成が増加した場合
    • 活性酸素種およびその関連物質を除去する働きが減少した場合

軽微な酸化ストレスは損傷を修復して回復できますが、より過酷な酸化ストレスはアポトーシスのトリガーとなる、あるいは細胞死に至らしめます。

活性酸素種の発生

ヒトは、空気中の酸素を肺から取り入れ、ヘモグロビンが全身の組織や細胞に酸素を運搬します。

酸素は、細胞自身の活動に必要なエネルギー(ATP;アデノシン三リン酸)を産生するために、細胞内のミトコンドリアという器官で消費(細胞呼吸)されます。

ミトコンドリアにある代謝過程において、酸素分子O2の大部分は、4電子還元されて水H2Oになります。

一部の酸素分子は、ミトコンドリアの電子伝達系から「漏れ出て」しまった電子と反応して、スーパーオキシド(スーパーオキシドアニオンラジカルO2・-)を生成します。

スーパーオキシドは、活性酸素種のひとつであり、フリーラジカルです。活性酸素種は、通常の代謝過程で自然に発生する酸素分子の副反応物で、有用でもあり有害でもあります。

一般に、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素の4種類が活性酸素とされ、以下のように生成します。

活性酸素の生成
  1. 一重項酸素1O2:紫外線を浴びることによりO2から発生する場合がある。
  2. 酸素分子O2
  3. スーパーオキシドO2・-:O2の電子1個還元状態。ラジカル。反応性は高くなく、自発的不均化または酵素の触媒作用を経てH2O2になる。
  4. 過酸化水素H2O2:O2の電子2個還元状態。脂溶性なので、ミトコンドリアや細胞の膜を透過し容易に拡散する。
  5. ヒドロキシラジカルOH:O2の電子3個還元状態。フェントン反応により生成される非常に反応性が高いラジカル。抗酸化物質によって無害化されなければならない。
  6. 水H2O:O2の電子4個還元状態。

活性酸素・フリーラジカルの除去

活性酸素種やフリーラジカルの発生は、酸素を使って活動する生物にとって已むを得ないことです。

そこで、フリーラジカルが生体に有害な化学変化を引き起こす前に、その前駆体としての活性酸素・フリーラジカルを酵素の触媒作用により分解します。

この予防的酸化防御が働いてもフリーラジカルは不都合に発生し、生体物質と反応してしまいます。

酸素は、細胞内ミトコンドリア電子伝達系の代謝過程において、エネルギー産生のために必ず必要です。

酸素の一部は、電子と反応して副産物のスーパーオキシドO2・-を生成し、スーパーオキシドはいくつかの抗酸化酵素によって還元されて最終的に水になります。

  • O2O2・- → [スーパーオキシドジスムターゼ2] → H2O2 → [グルタチオンペルオキシダーゼ] → H2O

ミトコンドリアに存在する酵素スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2; superoxide dismutases 2)は、スーパーオキシドの不均化反応を拡散律速に近い速さで触媒する酵素で、出会ったときには既に反応は終わっています。また、SOD1は、細胞質においてこの反応を触媒します。

  • 2O2・- + 2H → [スーパーオキシドジスムターゼ2] → H2O2 + O2

過酸化水素H2O2は脂溶性なので、ミトコンドリアの膜を透過して細胞質に拡散できます。

細胞質に存在する過酸化水素は、グルタチオンと反応して水に還元されます。この反応は、酵素グルタチオンペルオキシダーゼが触媒します。

また、細胞内のペルオキシソームという器官に存在する酵素カタラーゼは、過酸化水素を酸素と水に分解する反応を触媒します。

グルタチオン系
  1. H2O2 + 2GSH → [グルタチオンペルオキシダーゼ] → 2H2O + GSSG
    • GSH(Glutathione-SH):還元型グルタチオン。グルタミン酸-システイン-グリシンの順番でペプチド結合。
    • GSSG(Glutathione-S-S-Glutathione):酸化型グルタチオン。2分子のGSHがジスルフィド結合。
    • システイン:アミノ酸のひとつで、側鎖にチオール基-SHを持つ。
  2. GSSG + NADPH + H+ → [グルタチオンレダクターゼ] → 2GSH + NADP+
    • GSSGは、NADPH依存的にグルタチオンレダクターゼによってGSHに還元され、サイクルが完了する。
    • NADP+:Nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、NADPHは還元型。

以上のように、スーパーオキシドは、酵素によって水に還元されますが、それ自体の反応性は比較的高くなく、非常に反応性が高いヒドロキシラジカルの前駆体としてのスーパーオキシド除去に意味があります。

過酸化脂質の生成

過酸化水素H2O2は、細胞質に存在する鉄イオン(タンパク質との結合から遊離した状態)などの遷移金属と反応して、ヒドロキシラジカルOHと水酸化物イオンOH-を生成します。

  • H2O2 + Fe2+OH + OH- + Fe3+

ヒドロキシラジカルOHやヒドロペルオキシルラジカルHO2は、細胞やミトコンドリアなどの生体膜のリン脂質脂肪酸PLHから電子を奪い、フリーラジカルの連鎖反応メカニズムによって、次から次へとリン脂質脂肪酸ヒドロペルオキシドPLOOHを生成します。

PLOOHをはじめとする脂質過酸化反応で生じる反応産物LOOHを、「過酸化脂質」と総称して用いることが多いです。

ヒドロキシラジカルOHは反応性が非常に高く、ほとんどすべての物質から水素Hを引き抜きますが、それゆえにOHを捕捉できる物質はありません。

過酸化脂質の生成はある程度仕方がないとしても、フリーラジカルの連鎖反応は止めなければならないし、生じた過酸化脂質は新たな連鎖反応が起きないように無害化する必要があります。

リン脂質過酸化反応の連鎖
  1. PLH + OH → PL + H2O
    • ヒドロキシラジカルOHはリン脂質脂肪酸PLHを酸化し、リン脂質脂肪酸ラジカルPLと水を生成。
    • PLH:PLはリン脂質Phospholipidの略。ここでは、2個以上(多価)の2重結合(不飽和)を持つ脂肪酸が対象。
    • ペンタジエン構造CH3-R-CH=CH-HCH-CH=CH-R-C(=O)OH のメチレン基-CH2-の水素が酸化される。
  2. PL + O2 → PLOO
    • リン脂質脂肪酸ラジカルPLは酸素分子と容易に反応し、リン脂質脂肪酸ペルオキシラジカルPLOOを生成。
  3. PLOO + PLH → PLOOH + PL
    • 他のリン脂質脂肪酸PLHと反応して、リン脂質脂肪酸ヒドロペルオキシドPLOOHと新たなリン脂質脂肪酸ラジカルPLを生成。
    • 新たなリン脂質脂肪酸ラジカルPLが2.の反応をすることにより、反応が連鎖する。
    • サイクルの停止は、ラジカルとラジカルが反応して非ラジカルを生成した場合など。

結果として、脂質過酸化反応の進行度合によりますが、細胞膜に存在する物質輸送チャネルや受容体、酵素などの機能は障害されます。

そして、ホスホリパーゼA2によりリン脂質から脂肪酸ヒドロペルオキシドLOOH(過酸化脂質)が切断され遊離し、膜構造が崩れます。

また、過酸化脂質それ自体は、とりあえず安定な化合物ですけれども、鉄イオンなどの遷移金属と容易に反応してLOO、LOを生成し、新たな脂質過酸化反応の連鎖反応が進行します。

脂質過酸化反応の停止

生体膜の脂質二重層に局在するビタミンE(α-トコフェロール)には、前述したリン脂質過酸化反応の連鎖反応を停止する働きがあります。

ビタミンEがリン脂質脂肪酸ペルオキシラジカルPLOOを捕捉して、自身はラジカル VE になります。VEはビタミンC(アスコルビン酸)によって還元され、PLOOを捕捉し続けます。

ビタミンEによるリン脂質過酸化反応の停止
  1. PLH + OH → PL + H2O
    • ヒドロキシラジカルOHは反応が非常に速く、捕捉できません。
  2. PL + O2 → PLOO
    • ペルオキシラジカルROOならばOHより反応性が落ちるので、捕捉できます。
    • OHが無くなれば、2.の反応は止まります。
  3. PLOOVE → PLOOH + VE
    • リン脂質脂肪酸ペルオキシラジカルPLOOがα-トコフェロールVEから水素Hを引き抜いて、リン脂質脂肪酸ヒドロペルオキシドPLOOHとα-トコフェロールラジカルVEを生成。
    • VEは安定していて反応性が低いので、PLHとVEの反応により新たな連鎖反応が開始することは少ないと考えられます。
  4. VE + VC(=O)(-OH)-VE + VC(=O)2
    • アスコルビン酸は、生体内ではアニオン型VC(=O)(-OH)-で存在します。
    • VC(=O)(-OH)-は酸化しやすく、VEをVEに還元し、自身は酸化型のデヒドロアスコルビン酸VC(=O)2になります。
    • 還元されたVEは、PLOOを捕捉します。
  5. VC(=O)2 + 2GSH + NADP+ → [グルタチオンレダクターゼ] → GSSG + NADPH + VC(=O)(-OH)-
    • グルタチオンGSHは、グルタチオンレダクターゼの触媒作用によりデヒドロアスコルビン酸VC(=O)2をアスコルビン酸VC(=O)(-OH)-に還元。

結果として、ビタミンEを減らさずに脂質過酸化反応を停止させることができましたが、反応で生じたリン脂質脂肪酸ヒドロペルオキシド PLOOH(過酸化脂質)は残ったままです。

過酸化脂質は、遷移金属と容易に反応してフリーラジカルを生成し、新たな脂質過酸化反応開始物となったり、活性カルボニル化合物を生成します。

過酸化脂質の消去

リン脂質脂肪酸ヒドロオキシドPLOOHを酵素的に2電子還元して、リン脂質脂肪酸ヒドロオキシドPLOH(不活性なアルコール)に無害化します。

リン脂質脂肪酸ヒドロオキシドの無害化
  1. PLOOH + 2GSH → [グルタチオンペルオキシダーゼ] → PLOH + H2O + GSSG
    • グルタチオンGSHを電子供与体としてPLOOHを還元する。
  2. GSSG + NADPH + H+ → [グルタチオンレダクターゼ] → 2GSH + NADP+
    • GSSGは、NADPH依存的にグルタチオンレダクターゼによってGSHに還元され、サイクルが完了する。

リン脂質脂肪酸ヒドロペルオキシドPLOOHの無害化は、膜に残った状態で直接無害化する経路と、ホスホリパーゼA2によりリン脂質から脂肪酸ヒドロペルオキシドが切断されて遊離脂肪酸の状態で無害化する経路の2つが考えられます。

高血糖細胞の酸化ストレス

糖尿病患者は、血糖コントロールを行なっていても容易に高血糖になってしまいます。

細胞は高血糖の浴槽に浸かっているようなもので、細胞内が高血糖になるかどうかは、細胞膜にあるグルコース輸送体の性質と細胞内におけるグルコース代謝の状態に依存します。

細胞外のグルコースは、細胞膜にあるグルコース輸送体(GLUT; glucose transporter)によって細胞内へ取り込まれます。

サブクラスIに属するGLUTアイソフォームの主な発現組織と性質は次のとおりです。

GLUTサブクラスI
  • GLUT1:赤血球、血液脳関門の血管内皮細胞…グルコース高親和性
  • GLUT2:肝細胞、膵β細胞、腎尿細管上皮細胞、小腸上皮細胞…グルコース低親和性
  • GLUT3:神経細胞…グルコース高親和性、GLUT1の補完
  • GLUT4:骨格筋、心筋、脂肪組織…インスリン依存性グルコース取り込み

GLUT1およびGLUT3は、細胞外が低グルコース濃度でもグルコースを細胞内に輸送可能で、普通の血糖レベルにおいては、その輸送速度は最大ですけれども輸送量は少ないです。例えるなら「小口径バルブ全開」でしょうか。

GLUT1発現細胞は、慢性的な高グルコース濃度に対してGLUT発現の低下によるグルコース輸送の減少(pdf)が見られるようです。

細胞内グルコース濃度がある程度以上に高くならないような下方制御の仕組みが備わっているものの、細胞内環境が変わった場合に「高血糖細胞」になると思われます。

GLUT2は、通常の血糖レベルにおいては輸送量は少ないですけれども、輸送速度に余裕があります。

細胞外が高グルコース濃度になるにしたがって、輸送速度は上昇して輸送量は多くなり、それでもなかなか飽和しません。例えるなら「大口径バルブ漸次開」でしょうか。

GLUT2発現細胞の細胞内グルコース濃度は、細胞外のそれを反映すると考えてよいと思います。

インスリン分泌あるいはインスリン感受性が低下している糖尿病患者は、グルコース取り込み低下および糖新生亢進により、細胞外グルコース濃度のレベルは高くなります。

このとき、グルコース輸送において下方制御の仕組みがない細胞は、細胞外グルコース濃度を反映して細胞内高グルコース濃度になりやすいです。

スーパーオキシドの過剰生成

内部グルコース濃度が高い細胞のミトコンドリアの電子伝達系は、スーパーオキシドアニオンラジカルを過剰生成(英語)します。

内部が高グルコース濃度の糖尿病患者の細胞は、TCA回路において酸化されることになるであろうより多くのグルコースが存在し、実際にTCA回路は、より多くの電子供与体(NADHとFADH2)を電子伝達系に押し出します。

「押せ押せ」で電子が電子伝達系に供与された結果、プロトン濃度勾配による電気化学的ポテンシャルは、臨界閾値に達するまで上昇します。

この時点で複合体III内部の電子伝達が遮断され、電子の流れが還元型ユビキノンで止まり、ここから電子e-が1個ずつ次々に漏れ出します。

それによって酸素分子O2が還元され、スーパーオキシドが過剰生成します。

高血糖細胞の活性酸素の除去

細胞内高グルコース濃度のミトコンドリアの電子伝達系は、より多くの電子(NADHとFADH2)が供与されることになって、スーパーオキシドを過剰に生成します。

プロトン濃度勾配による電気化学的ポテンシャルは臨界閾値程度まで上昇しており、脱共役タンパク質がプロトン濃度勾配による電気化学的ポテンシャルを解放しつつ酸化的リン酸化によるATP産生を行なうため、ATP産生率は低下します。

スーパーオキシドO2・-は前述したように、ミトコンドリアに存在する酵素スーパーオキシドジスムターゼ2の触媒作用により過酸化水素H2O2と酸素O2を生成します。

さらに、過酸化水素は、酵素グルタチオンペルオキシダーゼの触媒作用により還元型グルタチオンの存在下、水と酸化型グルタチオンを生成します。

酸化型グルタチオンは、NADPH依存的に酵素グルタチオンレダクターゼによって還元型グルタチオンに還元されて、これでスーパーオキシド除去サイクルが終了です。

NADPHが減少すると、スーパーオキシドの除去反応が進まなくなります。

また、過酸化水素由来のフリーラジカルによる過酸化脂質の生成およびそれの消去は前述したとおりですが、スーパーオキシドが過剰に生成しているだけに通常より過酷な生体損傷を被ってもおかしくありません。

過剰なスーパーオキシドは、解糖系の酵素グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH; glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)の活性を阻害します。

その結果、細胞内では、グリセルアルデヒド-3-リン酸や上流の解糖系中間生成物のフルクトース-6-リン酸やグルコース-6-リン酸、グルコースが増加します。

解糖系の活性低下
  1. ↑グルコース + ATP → [ヘキソキナーゼ] → グルコース-6-リン酸 + ADP
  2. ↑グルコース-6-リン酸 → [グルコース-6-リン酸イソメラーゼ] → フルクトース-6-リン酸
  3. ↑フルクトース-6-リン酸 + ATP → [PF-1(phosphofructokinase-1)] → フルクトース-1,6-ビスリン酸 + ADP
  4. ↑フルクトース-1,6-ビスリン酸 → [ALDO(fructose-bisphosphate aldolase)] → グリセルアルデヒド-3-リン酸
  5. ↑グリセルアルデヒド-3-リン酸 + NAD+ + Pi → [GAPDH┣ O2・-] → 1,3-ビスホスホグリセリン酸 + NADH + H+
  6. ↓1,3-ビスホスホグリセリン酸 + ADP → …
  7. 以降の過程で4ATP産生、前半で2ATP消費、解糖系では計2ATP産生

解糖系最初のヘキソキナーゼの触媒作用による反応速度は、最大かそれに近く、細胞内グルコース濃度は細胞外のそれよりも低い濃度勾配が維持され、グルコースは細胞内に促進輸送されています。

グルコース-6-リン酸が増加するとヘキソキナーゼの活性が阻害され、グルコース濃度勾配は小さくなっていきます。

このようにして細胞内グルコース濃度が高くなり過ぎた場合、グルコースの一部はポリオール経路に流れます。

ポリオール経路

通常は、毒性のアルデヒド(R-(C=O)H)を不活性なアルコール(R-OH)に還元する経路。

  1. グルコース(のアルデヒド形の鎖状体) + NADPH + H+ → [アルドース還元酵素] → ソルビトール + NADP+
  2. ソルビトール + NAD+ → [ソルビトール脱水素酵素] → フルクトース + NADH

ソルビトールに変換することにより細胞内高濃度グルコースを減少させる過程において、アルドース還元酵素は、補因子NADPHを消費します。

NADPHは、細胞質の重要な抗酸化物質であるグルタチオンを還元型に再生(前述したグルタチオン系による過酸化水素の無害化やリン脂質脂肪酸ヒドロオキシドの無害化など)するために不可欠です。

ポリオール経路が亢進することによって還元型グルタチオンが減少することになり、細胞内は酸化ストレスを受けやすくなります。