尿糖は糖尿病の発見につながる手がかり

健康診断や糖尿病の定期受診時には、必ずといっていいほど尿糖検査があると思います。

尿糖とは?

血液中のグルコース(=ブドウ糖)が腎臓から尿に漏れること。

  • 血中グルコース濃度(=血糖値)が腎臓の糖排泄閾値を超えた場合
    • 多量の飲食物を摂取して一時的に出ることもある。
  • 腎臓の糖排泄閾値が通常より低い人の場合
    • 逆に高齢者は閾値が通常より高くなっていることが多い。

尿糖自体は別に珍しいことではなく、検査で陽性になったからといって「自分は糖尿病なのか」と思うのは早合点です。「尿糖」と「糖尿」、似てはいるのですけれども。

腎臓は、血液を濾過する働きをします。血液中の老廃物や過剰な電解質および水分は、尿として体外に排泄されます。グルコースはエネルギー源となる有用な物質なので、濾過後に再吸収されて、通常は尿中に排出されることはないです。

尿糖の原因が

  • 病的な高血糖
  • 腎機能に因るもの
  • 一過性のもの

のどこにあるのか、検査結果からは判断できませんが、とても簡単な検査なので病気を見つけるためのスクリーニング検査として利用されています。

腎臓におけるグルコースの流れ

腎臓の主な機能は、血液を濾過し老廃物や過剰な水分および電解質を尿として排出することです。

血中グルコースの流れ
  1. 腎動脈
  2. 腎臓
    1. 通常ルート:濾過 → 再吸収 → 3.へ
    2. 尿糖ルート:濾過 → 再吸収されずに尿中へ
  3. 腎静脈

腎臓の糖排泄閾値が正常で血糖値もその閾値を越えない場合、腎臓を経由した全てのグルコースは再び血流に乗ります。

  • 腎動脈 → 輸入細動脈 → 糸球体 → ボーマン腔 → 近位尿細管 → [再吸収] → 腎皮質 → 輸出細動脈 → 腎静脈

腎臓の糖排泄閾値を超える血糖値の場合、グルコースの一部は再吸収されずに尿中に漏れ出ます。尿糖です。

  • 腎動脈 → 輸入細動脈 → 糸球体 → ボーマン腔 → 近位尿細管 → [再吸収されなかったグルコース] → ヘンレのループ → 遠位尿細管 → 集合管 → 腎杯 → 腎盂 → 尿管 → 膀胱 → 尿道 → 排泄

腎臓の糖排泄閾値

グルコースが尿に漏れ出始める血糖値のことを言う糖排泄閾値は、

  • 糸球体濾過量
  • 尿細管におけるグルコース再吸収能

のふたつで規定されます。

図1.腎臓の糖排泄閾値:糸球体のグルコース濾過量[mg/分]をy、糸球体濾過量GFR[ml/分]をk、血漿グルコース濃度[mg/dl]をxとおくと、y=kxの正比例の関係にあります。対して濾過されたグルコースを再吸収する尿細管のグルコース再吸収能yは、血漿グルコース濃度に関係無く一定、y=cです。このふたつの関係から、グルコースが全て再吸収されて尿中に排泄されないのはkx<cのとき、グルコースが尿中に排泄されるのはkx>cのときです。

糸球体濾過量とは

腎臓のすべての糸球体が単位時間当たりに濾過できる血漿量[ml/分]のこと。GFR(glomerular filtration rate)は、

  • クレアチニンクリアランス
  • 血清クレアチニン

のいずれかを使ったGFR推算式より得られた値で代用できる。

ここで、糸球体濾過量(GFR)を 125 [ml/分]とします。

1分間に濾過されるグルコース量は、腎血漿グルコース濃度に比例して増加し、たとえば血漿グルコース濃度が 280 [mg/dl]のときのグルコース濾過量(濾過速度)は、次のようになります。

  • 125 [ml/分] × 280 [mg/dl] = 350 [mg/分]

濾過されたグルコースは、尿細管で再吸収されることになりますが、尿細管における再吸収能力の限度を超えたグルコースは、そのまま尿細管を通って行き尿中に排泄されます。

ここで、グルコース再吸収の最大速度(最大量)を 350 [mg/分]とします。

図1.から、血漿グルコース濃度が280[mg/dl]を超えると、グルコースは尿中に排泄されることがわかります。

尿細管において、グルコースは能動輸送で再吸収されるので、輸送担体が飽和した状態がグルコース再吸収の最大速度です。

血漿グルコース濃度が 150 [mg/dl] 程度までは、濾過されたグルコースは全て再吸収されますが、200 [mg/dl]あたりから輸送担体の飽和に近づきつつあり、400 [mg/dl]を超えると完全に飽和状態で、グルコース再吸収速度(量)は 350 [mg/分]で頭打ちです。

図1.の例では、血漿グルコース濃度 200 [mg/dl]前後が糖排泄閾値です。

一般に、加齢は、糸球体濾過量の低下を招く(図1.のグルコース濾過速度の傾きが寝てくる)ため、高齢者の糖排泄閾値は、高くなる傾向があります。

また、グルコース再吸収の最大速度は、男性より女性の方が若干低いです。

先天的あるいは後天的にグルコース再吸収速度(量)が低下した人の糖排泄閾値は低く、正常な血糖値の範囲でも尿糖が出てしまいます。これらは腎性糖尿と呼ばれ、糖尿病とは全く関係がありません。

高血糖性の尿糖

腎性糖尿に代表される正常血糖性の尿糖は、腎臓の機能低下が原因ですけれども、高血糖性の尿糖は、血漿グルコース濃度(血糖値)が腎臓の糖排泄閾値を超えたことによります。

1型・2型・その他の型・妊娠の各糖尿病は言わずもがな、薬剤性のもの、感染や炎症などの身体的ストレスによるものなどが、高血糖性の尿糖になる要因として挙げられます。

糖尿病の診断には、厳格な血糖値の確認が必須です。糖排泄閾値は年齢や性差、個人差により幅があり、尿糖から血糖値を推定することはできません。

したがって、尿糖陽性反応が意味するところは、「糖尿病の疑いがあるかもしれない」という程度です。

尿中糖定性半定量検査

尿中の糖(グルコース)の存在の有無を、試験紙を用いて調べる検査です。

血糖値が最も低くなるであろう朝食前空腹時に尿糖陽性ならば、「糖代謝異常があるのではないか」と疑うことができます。

逆に血糖値が最も高くなる食前から食後2時間の時間帯を含む尿が尿糖陰性ならば、「血糖は正常であろう」と推測できます。

検査値の意味
  • 陰性(-):尿中にグルコースが存在しないか、存在したとしても検出感度以下。
  • 陽性(±), (+), (2+), (3+), ……:尿中にグルコースが存在する。
  • 定性半定量±(50), 1+(100), 2+(200), 3+(500), 4+(1000):尿中にグルコースが存在する。数字は、尿中グルコース濃度[mg/dl]のおおよその値。