湖岸から眺めたオコタンペ湖(1984年)

支笏湖ユースホステルに宿泊していた人たちと翌日、オコタンペ湖に行った。この日の午後に苫小牧発フェリーで初めての北海道を離れる予定だったから、時間はたっぷりあるし……ということだったと思う。

展望台の木々の隙間から、オコタンペ湖面の濃い藍色をみることができる。1984年8月27日、展望台から撮影。ここからはオコタンペ湖の一部しか見えないが、濃い藍色は美しく、今も変わらない。

実はこの時、登山道をたどって湖岸に降りている。道道78号線のオコタンペ湖橋たもとの登山口から登って行くことができたのだ。

現在は「オコタンペ湖登山口」という案内板は撤去され、湖岸に行くことは自然保護の観点から勧められない。2014年8月のストリートビュー画像では案内板は無く、2010年10月の画像では「漁岳周辺森林生態系保護地域」である旨の案内板を確認できる。

なぜ登山ルートは隠されたのか。ウェブ上の資料を調べてみた。

支笏洞爺国立公園

1949年(昭和24年)5月16日、オコタンペ湖がある支笏湖地域が支笏洞爺国立公園に指定された。

仮称「道南」国立公園指定促進期成会設立から3年後のことで、国立公園指定に合わせて千歳観光協会(現・千歳観光連盟)の設立、ホテルの開業、野営場の開設、観光パンフレットの発行などが行われた。

支笏湖マップ1983年6月発行の観光パンフレット「ちとせ&しこつこ」(千歳観光連盟)より。オコタンペ湖登山口が載っている。

オコタンペ湖周辺特別保護地区

オコタンペ湖周辺は、1953年(昭和24年)9月22日、公園の中で特にすぐれた自然景観、原始状態を保持している地区として特別保護地区に指定された。支笏・定山渓・登別地域の国立公園計画図(pdf)参照。

特別地域や特別保護地区は、開発や過剰な利用から保護するため、公園内で行うことができる行為に対して厳しく規制されている。

許可が必要な規制行為の例として次のようなものがあるが、許可が下りれば大規模な開発も可能である。実際、国立公園内にダムや札幌オリンピックのスキー滑降コースが建設された。

  • 工作物の新築、改築、増築
  • 木竹の伐採
  • 土地の形状変更
  • 指定する区域内への立入り
  • 指定地域での車馬乗入れ
  • 木竹の損傷……など

オコタンペ湖展望台には「オコタンペ湖 国立公園です自然をまもりましょう 苫小牧営林署」という案内板があった。1984年8月30日、オコタンペ湖展望台で撮影。この後、オコタンペ湖登山口から湖岸まで歩いた。

展望台は特別保護地区内の道道78号線沿いにあるが、そこに至る道路や歩道上は許可を得て開発されたものなので、「指定する区域内への立入り」や「指定地域での車馬乗入れ」にあたらない。

1984年当時のオコタンペ湖

バイクで道道78号線のオコタンペ湖橋たもとまで行き、登山道を歩いて湖岸まで下りた1984年当時の私は、自然公園法に抵触すると思いますか?

オコタンペ湖の見どころ探索。恵庭岳中腹からの眺め。展望台からの眺め。登山口。湖岸。1983年6月発行の観光パンフレット「ちとせ&しこつこ」(千歳観光連盟)より。登山口と西側湖岸の写真が載っている。
[2017-02-21追記] 西側湖岸が砂浜のように見えるのは、オコタンペ湖が堰き止められた後、漁岳や小漁岳からの流入河川によって作られた扇状地地形のため。

道路(車道や歩道)を利用する行為は、特別保護地区であっても適正な公園利用を増進するために必要不可欠なものとして「国立公園管理計画」に定めてあれば、規制されないのです。

1996年(平成8年)3月から運用された管理計画書(pdf)によると、オコタンペ湖線(歩道)の公園事業取扱方針は、オコタンペ川沿いにオコタンペ湖へ至る登山歩道として整備を検討する。工法については、湖岸及び湿原の保全に留意する。とある。既にあった登山道(も含めて)のことだと見て取れる。

湖岸から見たオコタンペ湖。1984年8月30日撮影。オコタンペ湖登山口から登って着いた湖岸は、右も左も木に阻まれて水辺を歩くことはできなかった。

オコタンペ湖登山口の現在

2010年(平成22年)5月より運用の現・管理計画書(pdf)では、オコタンペ湖線(歩道)は削除されている。

本公園の特徴である様々な火山及び火山活動を由来とした原生的な自然環境を厳正に保全するため、開発行為によるこれらの改変は極力抑制する。という管理の基本方針に従ったものと思われる。

オコタンペ湖の湖面標高は、支笏湖より320[m]ほど高い。オコタンペ川はこの高さを約3.5[km]で支笏湖へ注ぐ急流で、オコタンペ川に沿って登っていく登山ルートはそれ以上に急勾配だ。登山歩道として整備したとしても、管理が大変だろう。

2010年(平成22年)4月、オコタンペ湖周辺特別保護地区の国有林は、その管理を行う北海道森林管理局により漁岳周辺森林生態系保護地域に設定された。森林生態系保護地域は、最も高い保護レベルで管理される保護林のこと。

この年、「オコタンペ湖登山口」案内板があった場所に「漁岳周辺森林生態系保護地域」案内板が立てられたが、今はそれも無い。

1997年以降、奥潭(支笏湖のオコタン湖畔)から先の道道78号線は通行止めになっている。奥潭にあったホテルや野営場は閉鎖され、もう道はつながっていない。

オコタンペ湖登山口も忘れ去られていい時期なのかもしれない。

[2017-02-21追記] ストリートビューで登山口からオコタンペ橋の中ほどに移動してオコタンペ川上流を見上げると、オコタンペ湖溶岩(谷の右側)を見ることができる。この溶岩は恵庭岳の噴火によって流れ出して「谷の左側」に到達し、オコタンペ川を堰き止めた。(参照:支笏湖学のすすめ その11 pdf)